Again
「ごめん」
「家にいたって全然楽しくなった……いつもどうしていいか分からなかった。それでも……なんとか仁さんと仲良くなりたいって……頑張った……カモフラージュなんて……一人で買い物をしてたって、映画を観たって、ご飯を食べたって……全然楽しくなかった!」
「そうだな、葵は頑張ってくれていた。感謝していたよ。ちゃんと伝えることが出来なくてごめん」
「酷いわ……立ち直りかけていたのに……そんな時に現れるなんて、酷い……」
仁の胸を拳で叩く。
「葵が好きだよ。葵がいなくなってから寂しくて仕方がなかった」
葵は仁の初めての告白に涙が止まらなかった。仁は葵を抱きしめ、背中を摩る。
難しいことを考えずに、今のように思いの全てをぶちまければよかったのだ。仁を責めながらも、葵はそうできなかった自分を責めていた。
仁は、サイドテーブルにあるスマホに手を伸ばし、潤に電話をかけた。
「潤か? 悪いが、葵が今此処にいる。話し合いをしているんだ。何か理由づけをして許せる範囲で休ませたい。お願い出来るか?」
『それは構わないが、時期に夕食だぞ、重役連中が待ってるが、どうするんだ?』
「悪い……それも何とか出来ないか?」
『わかった、しっかり葵ちゃんと話し合えよ。わかったな』
「ああ」
仁は葵を更に引き寄せきつく抱きしめる。縋り付く葵が愛おしくてたまらなかった。
葵はもう仕事などどうでもよくなっていた。この胸に縋り付いていたい、でも、許せない気持ちが、このままでいたい気持ちよりも勝っているのも事実だ。
どれくらいの時間そうしていたのかは分からない。凄く長い気もするし、5分くらいの短さにも感じる。泣き疲れた葵は、しばし仁の胸でボーっとしていた。その間も仁は葵をしっかりと抱きしめ背中をさすった。
「すみません、お仕事でしたね。もう私も仕事に戻ります」
そんな気はもうとっくに失せていたが、口は嘘をつく。
「大丈夫だ、潤がうまく取り計らったから」
「潤さんに迷惑をかけてしまいました」
「そんなことはない……」
仁は葵の流した沢山の涙をティッシュで拭く。
「酷い顔でしょ」
「いや、どんな顔でも葵は可愛い」
以前の仁なら考えられないような言葉が出る。葵は恥ずかしくなった。
「パリでのことだが、自分の愚かさに反吐がでるよ。俺は分かってなかった。葵にプレゼントを用意したい、どんなに喜ぶだろうとそれだけを思い買い物をしていた。でも、葵の欲しかった物は品物なんかじゃなくて、俺との時間と絆だった。だから、もう一度チャンスをくれないか?」
仁の話を聞く間も、葵は仁から離れられないでいた。抱きしめる強い腕に抱かれ、体を預ける。なんと心地よいことか。欲しかったものはこれなのか。
「葵……」
見つめる葵に、仁は顔を近づけ唇を重ねた。
葵は目を閉じそれに応える。唇から感じる安心感、体がふわふわと浮いて行くようだ。
「葵、好きだ。ずっとまえから好きだった」
「あ、私……どうして……」
まるで魔術にかかっていたかのようにぼーっとしていた葵は、仁の告白を聞き我に返る。
仁から離れ、立ち上がった。
そんな葵に仁は、離さないとばかりに抱きしめた。
「仁さん、離して」
「もう離さない。何があっても……これから毎週末沖縄に来る。葵がちゃんと、もっと向き合ってくれるまで何度でも。葵はもう俺からは逃げられない。俺も自分からはもう逃げない」
いままでの仁とは思えない言葉だった。
「仁さん……」
葵は、この時が来るのを待っていたような気がしていた。
「家にいたって全然楽しくなった……いつもどうしていいか分からなかった。それでも……なんとか仁さんと仲良くなりたいって……頑張った……カモフラージュなんて……一人で買い物をしてたって、映画を観たって、ご飯を食べたって……全然楽しくなかった!」
「そうだな、葵は頑張ってくれていた。感謝していたよ。ちゃんと伝えることが出来なくてごめん」
「酷いわ……立ち直りかけていたのに……そんな時に現れるなんて、酷い……」
仁の胸を拳で叩く。
「葵が好きだよ。葵がいなくなってから寂しくて仕方がなかった」
葵は仁の初めての告白に涙が止まらなかった。仁は葵を抱きしめ、背中を摩る。
難しいことを考えずに、今のように思いの全てをぶちまければよかったのだ。仁を責めながらも、葵はそうできなかった自分を責めていた。
仁は、サイドテーブルにあるスマホに手を伸ばし、潤に電話をかけた。
「潤か? 悪いが、葵が今此処にいる。話し合いをしているんだ。何か理由づけをして許せる範囲で休ませたい。お願い出来るか?」
『それは構わないが、時期に夕食だぞ、重役連中が待ってるが、どうするんだ?』
「悪い……それも何とか出来ないか?」
『わかった、しっかり葵ちゃんと話し合えよ。わかったな』
「ああ」
仁は葵を更に引き寄せきつく抱きしめる。縋り付く葵が愛おしくてたまらなかった。
葵はもう仕事などどうでもよくなっていた。この胸に縋り付いていたい、でも、許せない気持ちが、このままでいたい気持ちよりも勝っているのも事実だ。
どれくらいの時間そうしていたのかは分からない。凄く長い気もするし、5分くらいの短さにも感じる。泣き疲れた葵は、しばし仁の胸でボーっとしていた。その間も仁は葵をしっかりと抱きしめ背中をさすった。
「すみません、お仕事でしたね。もう私も仕事に戻ります」
そんな気はもうとっくに失せていたが、口は嘘をつく。
「大丈夫だ、潤がうまく取り計らったから」
「潤さんに迷惑をかけてしまいました」
「そんなことはない……」
仁は葵の流した沢山の涙をティッシュで拭く。
「酷い顔でしょ」
「いや、どんな顔でも葵は可愛い」
以前の仁なら考えられないような言葉が出る。葵は恥ずかしくなった。
「パリでのことだが、自分の愚かさに反吐がでるよ。俺は分かってなかった。葵にプレゼントを用意したい、どんなに喜ぶだろうとそれだけを思い買い物をしていた。でも、葵の欲しかった物は品物なんかじゃなくて、俺との時間と絆だった。だから、もう一度チャンスをくれないか?」
仁の話を聞く間も、葵は仁から離れられないでいた。抱きしめる強い腕に抱かれ、体を預ける。なんと心地よいことか。欲しかったものはこれなのか。
「葵……」
見つめる葵に、仁は顔を近づけ唇を重ねた。
葵は目を閉じそれに応える。唇から感じる安心感、体がふわふわと浮いて行くようだ。
「葵、好きだ。ずっとまえから好きだった」
「あ、私……どうして……」
まるで魔術にかかっていたかのようにぼーっとしていた葵は、仁の告白を聞き我に返る。
仁から離れ、立ち上がった。
そんな葵に仁は、離さないとばかりに抱きしめた。
「仁さん、離して」
「もう離さない。何があっても……これから毎週末沖縄に来る。葵がちゃんと、もっと向き合ってくれるまで何度でも。葵はもう俺からは逃げられない。俺も自分からはもう逃げない」
いままでの仁とは思えない言葉だった。
「仁さん……」
葵は、この時が来るのを待っていたような気がしていた。