Again
葵は暫く悩んだ末、仁に会うための連絡を、仲人の中村を介して取ってもらった。
仁から指定された場所は、こぢんまりとしたイタリアンレストランだった。
仁より先に着いた葵は、個室に通された。
「予約してくれていたんだわ。あたりまえか」
ウエイターが水を持って、先に飲み物でも注文するかと聞いてきた。
「あ、じゃあアイスコーヒーを氷抜きで」
「畏まりました」
そわそわしながら個室を見回す。品よく飾られた絵画を見るが、ちらりと見るだけに終わる。
「本でも読もうかな」
バッグから読みかけの文庫本を取出し読み始める。
葵の好きな作家の一人で、作品は全て読んでいる。今読んでいるのは血の繋がらない親子だけれど支え合いながら懸命に生きている。と言う内容。シリアスになりがちだが、子供がしっかりしていて母親を厳しく育てている。普通、親が子を育てるものだが、毎日、子供に母親が叱られるというホームコメディー物だ。
読み始めて暫くするとドアをノックする音が聞こえ、ウエイターがコーヒーを運んできた。
「お待たせいたしました。アイスコーヒーでございます」
「ありがとう」
「失礼いたします」
アイスコーヒーを一口飲み、続きを読み始める。
「ふふ」
軽快なセリフ回しが漫才の様で、随所に笑えるところが満載で吹き出してしまうのだ。
個室のせいもあってどんどん読み進める。しかし、仁は時間が過ぎても来る気配がない。ちらりと腕時計をみる。
「副社長さんだものね、時間通りに来られる訳がないか」
約束した時間より30分程過ぎ、葵は小説をひたすら読む。
「ふぁあ、眠い。昨日は緊張して良く眠れなかったのよね」
誰もいない個室で、一つ大きなあくびをする。
もう一度仁に真意を問いただすべく、向き合って話したいと思っていた葵は、寝ようとしても、どう話をするべきか、聞くべきか、と考えてしまっていた。気がつけば、葵はテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「あ、つ……」
首を同じ方向にした姿勢で、寝ていた葵は、首の痛さで目が覚めた。
首筋を揉んでほぐすと、目の前には仁が葵の文庫本を手に取り読んでいた。
「えっ!?」
「おはよう」
声の主は、仁で、爽やかな笑顔で、葵を見ていた。
「お? おは、おは……おはようございます」
夜におはようございますじゃない。それだけはわかる。葵はまったく今の情況がつかめていない。今はなんじなのだろうかと腕時計を見る。
「は、八時半!?」
待ち合わせは七時だった。小説を読んでいて、一度、時間を確認した。その時は待ち合わせの時間より30分過ぎていただけだった。
「遅れてごめん。急な要件が入ってしまって」
「いいえ! いいえ! あの一体何時にここへ?」
「そうだな八時くらいだったと思うが」
単純に計算しても葵は、この個室で30分も爆睡していたことになる。
控えめなクラッシックの音楽が流れ、心地よかったのだ。それに、寝不足も加わり、あっという間に寝ていた。ショックに葵は両手で顔を覆った。
仁から指定された場所は、こぢんまりとしたイタリアンレストランだった。
仁より先に着いた葵は、個室に通された。
「予約してくれていたんだわ。あたりまえか」
ウエイターが水を持って、先に飲み物でも注文するかと聞いてきた。
「あ、じゃあアイスコーヒーを氷抜きで」
「畏まりました」
そわそわしながら個室を見回す。品よく飾られた絵画を見るが、ちらりと見るだけに終わる。
「本でも読もうかな」
バッグから読みかけの文庫本を取出し読み始める。
葵の好きな作家の一人で、作品は全て読んでいる。今読んでいるのは血の繋がらない親子だけれど支え合いながら懸命に生きている。と言う内容。シリアスになりがちだが、子供がしっかりしていて母親を厳しく育てている。普通、親が子を育てるものだが、毎日、子供に母親が叱られるというホームコメディー物だ。
読み始めて暫くするとドアをノックする音が聞こえ、ウエイターがコーヒーを運んできた。
「お待たせいたしました。アイスコーヒーでございます」
「ありがとう」
「失礼いたします」
アイスコーヒーを一口飲み、続きを読み始める。
「ふふ」
軽快なセリフ回しが漫才の様で、随所に笑えるところが満載で吹き出してしまうのだ。
個室のせいもあってどんどん読み進める。しかし、仁は時間が過ぎても来る気配がない。ちらりと腕時計をみる。
「副社長さんだものね、時間通りに来られる訳がないか」
約束した時間より30分程過ぎ、葵は小説をひたすら読む。
「ふぁあ、眠い。昨日は緊張して良く眠れなかったのよね」
誰もいない個室で、一つ大きなあくびをする。
もう一度仁に真意を問いただすべく、向き合って話したいと思っていた葵は、寝ようとしても、どう話をするべきか、聞くべきか、と考えてしまっていた。気がつけば、葵はテーブルに突っ伏して寝てしまった。
「あ、つ……」
首を同じ方向にした姿勢で、寝ていた葵は、首の痛さで目が覚めた。
首筋を揉んでほぐすと、目の前には仁が葵の文庫本を手に取り読んでいた。
「えっ!?」
「おはよう」
声の主は、仁で、爽やかな笑顔で、葵を見ていた。
「お? おは、おは……おはようございます」
夜におはようございますじゃない。それだけはわかる。葵はまったく今の情況がつかめていない。今はなんじなのだろうかと腕時計を見る。
「は、八時半!?」
待ち合わせは七時だった。小説を読んでいて、一度、時間を確認した。その時は待ち合わせの時間より30分過ぎていただけだった。
「遅れてごめん。急な要件が入ってしまって」
「いいえ! いいえ! あの一体何時にここへ?」
「そうだな八時くらいだったと思うが」
単純に計算しても葵は、この個室で30分も爆睡していたことになる。
控えめなクラッシックの音楽が流れ、心地よかったのだ。それに、寝不足も加わり、あっという間に寝ていた。ショックに葵は両手で顔を覆った。