Again
リビングで本を読んでいた仁だったが、つい集中してしまい、葵を気にすることを忘れていた。週末に聞こえるパタパタという足音が聞こえない。本をパタンと閉じると、辺りを見回す。
「静かだな……」
同じ家に居るのだが、嫌な予感がして、慌てて立ち上がる。葵がいるだろう部屋を開けて回るが、何処にもいない。
「どこに行った?」
いよいよ仁は焦り始める。
「そうか」
休日に葵がしていることを考えれば、何も焦ることはないのだ。家事室とサンルームを行ったり来たりしていることを思い出す。仁は、サンルームがある、日当たりの良い南側の部屋のドアを開ける。
「葵……」
葵は、気持ちよさそうに丸くなって眠っていた。居たことに安心すると、寝室からブランケットを持ってくる。葵を起こさないように、そっとブランケットを掛ける。寝顔を見て、滅多に見せないふんわりとした笑顔で、葵の髪を撫でる。仁は、ゆっくりと葵の隣に身体を横たえると、首の下に腕を回して、葵を腕枕する。
「……う……ん」
身体を動かされ、葵は、向きを変える。葵と向き合った仁は、間近に見る葵の無邪気な寝顔に、愛おしさがこみ上げ、胸に抱きこんだ。気持ちが良い空気と、柔らかな日差しで、仁も瞼を閉じる。
どれくらいの時間がたったか、肌寒さを感じた葵は、ゆっくりと目を覚ます。
「……ん……」
葵の気配で仁も目を覚ます。
「……葵? ……起きたのか?」
「……!」
葵は今置かれている状況を把握するのに、そう時間はかからなかった。開けた目をキョロキョロとさせ、動揺をしめしている。起きている状態で、仁に抱きしめられているのは、恥ずかしい。葵は、仁の胸を押して、慌てて起き上がった。
「す、すみません」
手持無沙汰のように、髪を撫で、整える。手の持って行き場所を無くすと、エプロンを引っ張って見たりと、落ち着かない。
「疲れているようだ」
仁が葵に言う。
「いえ、そんなことは……サンルームが気持ちよくて、つい……それだけです」
「……そうか……」
そうじゃなくと、お互い分かっているが、交際0日夫婦では、お互いの気遣いが他人行儀だ。
「……買い物に行くか……?」
「あ、はい。……今、何時でしょう?」
「ああ、何時かな?」
仁は、時計を付けて手首を見る。いつもはめている癖だ。腕時計をつけていなかったと、部屋を見るが、時計はない。サンルームから外を見て、判断する。
「もう、午後だな」
「すみません」
「葵、謝らなくていいから。お互いに仕事をしているし、週末は疲れる。無理に主婦業をしなくていいんだから」
「すみません」
既に口癖になってしまっている、葵のすみませんを、仁は、複雑な表情で聞いている。何も言わずに立ち上がると、
「買い物に行くか」
と言って、葵に手を差し出す。葵は、その手を素直に取った。
「静かだな……」
同じ家に居るのだが、嫌な予感がして、慌てて立ち上がる。葵がいるだろう部屋を開けて回るが、何処にもいない。
「どこに行った?」
いよいよ仁は焦り始める。
「そうか」
休日に葵がしていることを考えれば、何も焦ることはないのだ。家事室とサンルームを行ったり来たりしていることを思い出す。仁は、サンルームがある、日当たりの良い南側の部屋のドアを開ける。
「葵……」
葵は、気持ちよさそうに丸くなって眠っていた。居たことに安心すると、寝室からブランケットを持ってくる。葵を起こさないように、そっとブランケットを掛ける。寝顔を見て、滅多に見せないふんわりとした笑顔で、葵の髪を撫でる。仁は、ゆっくりと葵の隣に身体を横たえると、首の下に腕を回して、葵を腕枕する。
「……う……ん」
身体を動かされ、葵は、向きを変える。葵と向き合った仁は、間近に見る葵の無邪気な寝顔に、愛おしさがこみ上げ、胸に抱きこんだ。気持ちが良い空気と、柔らかな日差しで、仁も瞼を閉じる。
どれくらいの時間がたったか、肌寒さを感じた葵は、ゆっくりと目を覚ます。
「……ん……」
葵の気配で仁も目を覚ます。
「……葵? ……起きたのか?」
「……!」
葵は今置かれている状況を把握するのに、そう時間はかからなかった。開けた目をキョロキョロとさせ、動揺をしめしている。起きている状態で、仁に抱きしめられているのは、恥ずかしい。葵は、仁の胸を押して、慌てて起き上がった。
「す、すみません」
手持無沙汰のように、髪を撫で、整える。手の持って行き場所を無くすと、エプロンを引っ張って見たりと、落ち着かない。
「疲れているようだ」
仁が葵に言う。
「いえ、そんなことは……サンルームが気持ちよくて、つい……それだけです」
「……そうか……」
そうじゃなくと、お互い分かっているが、交際0日夫婦では、お互いの気遣いが他人行儀だ。
「……買い物に行くか……?」
「あ、はい。……今、何時でしょう?」
「ああ、何時かな?」
仁は、時計を付けて手首を見る。いつもはめている癖だ。腕時計をつけていなかったと、部屋を見るが、時計はない。サンルームから外を見て、判断する。
「もう、午後だな」
「すみません」
「葵、謝らなくていいから。お互いに仕事をしているし、週末は疲れる。無理に主婦業をしなくていいんだから」
「すみません」
既に口癖になってしまっている、葵のすみませんを、仁は、複雑な表情で聞いている。何も言わずに立ち上がると、
「買い物に行くか」
と言って、葵に手を差し出す。葵は、その手を素直に取った。