Again
「どこに行く?」
車に乗り込み、キーを差し込み、エンジンを掛ける。
「あの……車なので、食材以外にも買いたい物があって、少し先のショッピングセンターでもいいですか? あの、無理じゃないですから。そんな買い物はネットでも出来るので、あの本当に」
葵はそう言ってしまったあとに、面倒なことを言ってしまったのではないかと、考え思いつく限りの言葉で遠慮を言ってみる。
「俺に遠慮をしないで。いつでも買い物くらい付き合うから、車だって出すし、面倒なことはないから。もっと我儘を言ってくれていいんだよ」
仁は反省していた。結婚してからの週末、仁の様子を見てそっと買い物に出ていたことは薄々分かっていたのに、声をかけられなかった。それが、葵にこうした言葉を言わせている結果になっている。
「すみません」
既に、口癖になってしまっている。仁を前にすると、どうしても謝ってしまう。いけないことをしている自覚はないが、仁の問いかけが、葵にとって、謝る材料になってしまっているのだ。葵も言わないようにしているつもりだが、どうしても口から出てしまう。反省が、葵を俯かせた。
「……行くよ?」
俯いたままでシートベルトを掛けると、四駆独特のエンジン音を出し、駐車場を出た。
そう混んでいない道を、目的のショッピングセンターまで車を走らせる。ずっと信号に引っかからず順調に走行していたが、初めて赤信号になり車は止まった。
「今日のご飯は何?」
「あ、ハンバーグにしようかと……他のでもいいです。何か食べたい物はありますか?」
週末以外は大抵遅い帰りになる仁は、食事を作ってラップをかけて置いておけば、一人で温めて食べている。聞かれたことに慌てて答える。仕事をしている葵は、家事の時間を減らすために、食事のおかずだけはあらかた決めていた。
「いや、ハンバーグで構わない」
そう答えて信号が青に変わる。意外と仁も葵との会話を模索しているのかもしれない。だとしたら、その続きを葵が見つけなければ、会話は成立しない。まだまだ先のショッピングセンターまで、何を話そうか。葵の頭の中はどの話題を持って行けば仁がのってくるかと思いめぐらせていた。
「あの……何ハンバーグがいいですか?」
「ん? 作るのが楽なもので構わない」
「あ、ああ……わかりました」
これでは会話は続かない。仁の癖か、言葉を短く切るのが仁だった。葵の返事が小さくなってはっと気が付く。しまったという顔をする仁だが、うまくカバーする言葉もない。葵は、顔を窓に向けて、外を眺めた。
車に乗り込み、キーを差し込み、エンジンを掛ける。
「あの……車なので、食材以外にも買いたい物があって、少し先のショッピングセンターでもいいですか? あの、無理じゃないですから。そんな買い物はネットでも出来るので、あの本当に」
葵はそう言ってしまったあとに、面倒なことを言ってしまったのではないかと、考え思いつく限りの言葉で遠慮を言ってみる。
「俺に遠慮をしないで。いつでも買い物くらい付き合うから、車だって出すし、面倒なことはないから。もっと我儘を言ってくれていいんだよ」
仁は反省していた。結婚してからの週末、仁の様子を見てそっと買い物に出ていたことは薄々分かっていたのに、声をかけられなかった。それが、葵にこうした言葉を言わせている結果になっている。
「すみません」
既に、口癖になってしまっている。仁を前にすると、どうしても謝ってしまう。いけないことをしている自覚はないが、仁の問いかけが、葵にとって、謝る材料になってしまっているのだ。葵も言わないようにしているつもりだが、どうしても口から出てしまう。反省が、葵を俯かせた。
「……行くよ?」
俯いたままでシートベルトを掛けると、四駆独特のエンジン音を出し、駐車場を出た。
そう混んでいない道を、目的のショッピングセンターまで車を走らせる。ずっと信号に引っかからず順調に走行していたが、初めて赤信号になり車は止まった。
「今日のご飯は何?」
「あ、ハンバーグにしようかと……他のでもいいです。何か食べたい物はありますか?」
週末以外は大抵遅い帰りになる仁は、食事を作ってラップをかけて置いておけば、一人で温めて食べている。聞かれたことに慌てて答える。仕事をしている葵は、家事の時間を減らすために、食事のおかずだけはあらかた決めていた。
「いや、ハンバーグで構わない」
そう答えて信号が青に変わる。意外と仁も葵との会話を模索しているのかもしれない。だとしたら、その続きを葵が見つけなければ、会話は成立しない。まだまだ先のショッピングセンターまで、何を話そうか。葵の頭の中はどの話題を持って行けば仁がのってくるかと思いめぐらせていた。
「あの……何ハンバーグがいいですか?」
「ん? 作るのが楽なもので構わない」
「あ、ああ……わかりました」
これでは会話は続かない。仁の癖か、言葉を短く切るのが仁だった。葵の返事が小さくなってはっと気が付く。しまったという顔をする仁だが、うまくカバーする言葉もない。葵は、顔を窓に向けて、外を眺めた。