Again
店内に入り、カートを引く。仁がカートを押す姿は、なんとも言えない。きょろきょろと店内を見る仁は、子供の様な、好奇心いっぱいの顔をしている。



「洗濯洗剤、食器洗剤、柔軟剤……」



葵は、買い物メモを見ながら、ぶつぶつと言っている。店内の案内版を見ながら、移動して、カートにどんどん入れて行くと、



「生活用品ってこんなに必要だったんだな」



カートに入れられた生活用品を見て、しみじみ言う。



「まあ、そうですね。買いだめもありますけど」

「今までどうやって、買い物を? 重かっただろう?」

「少しづつ買っていただけです。特別なことはないです」



当たり前のことを聞くんだなと、葵は、そっけなく答えた。



「気づかなくてごめん」



申し訳ない顔で仁が謝る。



「別に、いいんですよ。必要な物は、私しかわからないんですから」



少し、言い方に棘があったのだろうかと、柔らかく言い直した。

会計を済ませると、買った商品を車に運ぶ。



「あ、あそこですね、車」

「ありがとう」



目印を見つけ覚えていた葵に案内され、微笑ましく仁は見る。

トランクを開けて、荷物を積み込むと、次はスーパーにと葵が言った。



「お腹は空かないか?」

「あ、すみません、気が付かなくて」

「いや、空いてないならいいんだ」



いや違うと、仁は言い直し、葵を誘う。



「休憩がてら、あそこで軽く食事をしよう」



ホームセンターからスーパーの間にカフェがある。そこを指さした。葵も指を向けた方向を見る。



「はい」



トランク閉め、隣にいる葵の手を繋ぐ。葵は驚いて、繋いだ手を見た。仁は、何も言わずに、カフェに向かって歩き出す。夫婦であるが、恋人として始まったばかりでもある。しかし、そこに気持ちがどれくらいあるかは、不確かだ。少なくとも、仁は葵を必要としている。仁にとって、行動に移すことは容易ではない。それを実践していくのが、仁の務めだ。隣に歩く葵の手をしっかりと繋いだ。

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