Again

見合いの話が来たとき、家族で相手の写真を見ていた。開口一番に反対したのは双子の弟達だ。理由は簡単。イケメン過ぎて、女を騙す。浮気をする。イコール姉ちゃんを泣かす。ということだった。

楓と翔は姉である葵が大好きだ。それは子供の時から変わらない。葵が付きあって来た（そうは言っても現在までに、たったの二人しか付き合ったことはないが）男は、双子の何らかの嫌がらせを受けている。葵としては姉想いで嬉しい限りだが、双子の眼鏡にかなう男は現れるのだろうかと心配でもあった。

今日、実際に見る仁は、写真よりも、もっと素敵な男性であった。涼しげな目元が特に印象的で清潔感がある。

葵は、緊張もあり、顔を上げられずに少し俯いていたが、仁は真っ直ぐに葵を見つめていた。





「葵さんは、プレシャスホテルにお勤めだとか」

「は、はい！あの、今は広報部に……」





葵の働くホテルは幅広いホテルの業務を知るために、１，２年すると移動がある。入社１年目はベルサービスにいた。





「私もよく、利用しています。パーティーや会合で。一流でいいホテルです」

「そ、そうですか。ありがとうございます」





葵は、プレシャスホテルという一流のホテルに勤務している。相手の仁は、商社勤務のサラリーマンと聞いかされている。何とか顔をあげて答えると目の前にいる見合い相手は、写真で見るよりもずっと男前だった。玄関に塩を置いておけば牛が寄ってくると言うが、ただそこに座っているだけで女が寄ってくる感じがする。葵の心中は穏やかではない。見つめ慣れていない葵は、仁の向ける真っすぐな視線に、どうしていいか分からず、視線が泳いでいた。





「お休みの日は何をしていらっしゃるのですか？」





仁は、低く響く声で質問をしてきた。葵は答えるだけで精一杯の感じだ。質問をされるたびに、びっくりして、身体が飛び跳ねていた。





「え、えーっと、か、家事手伝いを」

「そうですか」





それは嘘である。ホテルとバイトの掛け持ちして土曜日になると、疲れがどっと出て、午前中は死んだように寝ている。

起きてからも、ジャージでだらだらとしているが、それは言えない。恵美子がパート勤めをしているから、家事手伝いもあながち嘘ではない。嫌われる方向に話を持って行くなら、正直に答えた方が良かったかと、少し後悔した。