僕の彼女とアイスクリームと
僕の彼女とアイスクリームと
ブォォンと低い音を静かに立てて、空調が真上から冷たい風を吹きかけてくる。
予備校の教室には空調がつけられ、受験勉強をすることだけに快適な空間ができあがっていた。
長く真っ白な机の上には、分厚い参考書とノートとシャーペンと色ペン。ほぼ同じ年の人間が、前方にあるホワイトボードに向かって座っている奇妙な空間にも、慣れてきた。
講義の終了のチャイムが鳴ってもなお机に噛り付いたままの同志達を横目に、俺は急いで荷物をまとめる。
≪ハーゲンダッツが食べたい≫
久しぶりに鳴いたケータイの着信音。指先で弾いて開くと、短い言葉が紡がれていた。
≪パピコでもいい≫
再び鳴る着信音。
おそらく送信者の彼女は分かっているのだ、講義が終わる時間を。
≪ハーゲンダッツからランク落とし過ぎだろ≫
緩む口元を左手で隠しながら、返事を打つ。
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