現実は小説よりきなり






「宜しくね、美樹」

素直に差し出された手を掴んだ。


「こちらこそ、秘密のお友達宜しく」

ニシシと笑う美樹。


今まで敬遠してた相手が友達になった瞬間だった。


派手なグループで苦手な相手だと思ってたけど、話してみると凄く良い子で、気が合いそうなんだ。


普通で居たくて、勝手に苦手だと思って、声を掛けられる事を迷惑に思ってた。


だけど、そんな私にめげずに声を掛けてくれて友達になってくれた美樹に心の奥が温かくなったよ。




私達は少し世間話をした後、互いの連絡先を交換して部屋を出ることにした。


この時の私達はまだ気付いていなかった。


美樹にとって、私にとって、互いが一生の友になることを。













「じゃ、嵐ちゃん。また、LINEするね」

「うん。待ってるね」

そう言ってエレベーターを降りた所で手を振って別れた。




私は去っていく美樹の嬉しそうな姿を見てフッと口元を緩めると歩きだす。


眞由美達との朝の待ち合わせ時刻が迫っていたから。


正直、変な退散の仕方をしたから二人とも変に思ってるだろうし。

会うのが怖いと言えば怖いんだよね。


眞由美達は私の過去の事もトラウマの事も知らないし。


だけど、怖いからって休んで逃げたら、明日から学校に行けそうな気がしないしね。


って言うか、私、メンタル弱すぎでしょ。

自分の事ながら情けない。


「二人とも待っててくれてるかな?」

漏れ出た不安。

通学する生徒に混じって、正面玄関を目指した。


いつもの場所に、いつもと変わり無く居てくれる二人を発見してホッとする。


良かったぁ...居てくれた。

それだけで、気持ちが浮上する。


「お待たせ」

いつものように声を掛けながら歩み寄る。


「ううん、待ってないよ」

と眞由美。

「そうそう。行こうか」

眞由美の言葉に頷いた可奈。


「....うん」

三人で歩きだす。




「大丈夫だった?」

眞由美は正面を見たまま聞いてくれる。


「ん、ごめん。変なとこ見せちゃって。眼鏡忘れた事にパニクちゃった」

エヘヘと笑って眉を下げる。

情けないけど、本気でパニクったし。


「いつも冷静な嵐が焦ってたからビックリした」

可奈の言うことは正直な意見だと思う。








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