現実は小説よりきなり
「ごめん...面目無い」
シュンと頭を下げた私に、
「人間らしくて良かったよ?」
と眞由美が笑う。
「あ、それは言えてる。嵐て普段は妙に冷めてるし」
うんうんと頷いてフフフと笑った可奈。
二人の目にはそんな風に写ってたのか.....。
「今朝の事はなにか理由があってだろうから聞かないけど。いつか、話してくれたら嬉しい」
強制的に聞こうとしないのが嬉しいよ、眞由美。
「そうそう。嵐が一人で抱えきらなくなったら何時でも頼ってよね」
ありがとう、可奈。
二人のこんな風に気遣いしてくれる所が大好きだよ。
だから、近い内に話せるように頑張る。
中学の事を話して、二人が離れてしまうのが怖かったけど。
今なら話せるかも?って思うから。
だから、気持ちの整理を着けるまで少しだけ待っててほしい。
「二人には聞いてもらいたい事がある。きっと近い内に話すよ」
聞いてくれる?と首を傾けた。
「当たり前」
とピースサインした眞由美と、
「もちろんだし。どんとこい」
と自分の胸を叩いた可奈。
強く叩きすぎで、ゴホゴホと噎せたのは見なかった事にしておくね。
三人並んで歩く通学路。
胸の中が随分と軽くなった気がした。
その異変は下駄場から始まった。
昇降口の下駄箱の中に入ってた一枚のメモ。
私は紙を手に取り開いた。
[警告!古沢君達に近付くな]
こんな簡単なメモ書き。
思わずそれを掌で握りつぶす。
だって、眞由美達に気づかれたくない。
メモぐらいで余計な心配かけたくないし。
しわくちゃになったメモをブレザーのポケットにしまいこんで上靴を取り出した。
大丈夫、こんなメモ。
そう思うのに、指先が微かにと震えてた
大丈夫、しっかりしなきゃ。
上靴に履き替えて、既に上靴を履き替え終わった二人に近寄った。
「顔色悪くなったけど、足痛いの?」
私が手こずったのが足のせいだと思った眞由美は、私の右足首を見た。
「ん。今日は少し痛むみたい」
エヘヘと笑った。
「昨日の今日だもんね。無理しないでよ」
可奈まで心配そうに右足首を見てくる。
「ん。気を付ける」
さ、行こう、二人を促して歩き出した。
ここから立ち去りたい。
一刻も早く。