現実は小説よりきなり
次の日、朝から異変は始まった。
何時ものように登校した私の上靴が消えていた。
靴箱を開けて固まる私。
どうして?
どうして...上靴が無いの?
「どうかした?」
可奈が私の開く靴箱を覗き込んだ。
「...上靴がない」
同じ様に覗き込んだ眞由美がボソッと言った。
「...うん。無いね?」
誰が間違った?
ううん、そんなことないよね。
間違って履いてくなんて小学生じゃあるまいし。
「誰よ!蘭の靴取ったの!」
可奈が憤慨した。
「子供みたいな事するわね」
眞由美も怒ってくれてる。
「ま、無いものはないから仕方ないね」
ヤレヤレ...と溜め息をつく。
本当はドキドキしてたけど、二人に心配かけたくなかったから。
「職員室にスリッパ借りにいこ」
眞由美が私の手を引いてくれた。
「あ、うん。そうしよう」
笑顔で頷いた。
上靴が無くなったぐらいでクヨクヨしてらんないし。
私の手を引く眞由美と可奈と一緒に別棟の職員室を目指した。
朝来たら上靴が無くなってたと担任に説明したら、快くスリッパを貸してくれた。
イタズラがエスカレートするようなら相談するように約束させられて教室へ向かう。
その間も二人はプリプリ怒ってて。
張本人の私よりも二人が怒ってくれた事で気持ちは随分と軽くなった。
「おはよう」
その声に視線を移せばそこには古沢君。
いつものメンバーと彼の教室の近くでたむろってた。
「おはようございます」
とだけ言って頭を下げる。
親しくするつもりなんてないから。
「蘭ちゃんおはよ」
古沢君の左隣に居た美樹が微笑んで手を振ってくれる。
「おはよう」
美樹には笑って返した。
最近、彼女とはLINE友達だ。
互いの近況を話したりしてる。
それに、美樹は約束通り人目につくところではあまり馴れ馴れしく話して来ないので助かってる。
古沢君達の前を立ち止まる事もなく眞由美達と一緒に通り抜ける。
これが最近の光景。
美樹が言ってくれたのか、古沢君も人目につく所では必要以上に私に構ってこない。
だから、悪目立ちすることも無くなった。