現実は小説よりきなり
だけど、嫌がらせは悪化した。
靴の次はロッカーに入れてあった体操服が無くなった。
そして、その翌日には机に落書き。
一週間もすれば、皆に目に見えて分かるような嫌がらせをされるようになった。
犯人は分からない。
だけど、私を着実に追い込もうとしていた。
「なんなのよ、これって一体!」
バンッと私の落書きされた机を両手で力一杯殴った可奈。
怒り心頭である。
「ほんとよ。くだらない嫌がらせしてんじゃないし。見つけたら血祭りだからね!」
クラス中に聞こえるように怒鳴ったのは眞由美。
血祭りって...ちょっと怖いから。
そんな二人をクラスメートは訝しげに見つめる。
その中に顔を青ざめさせた人間が二人。
周囲を見渡していた私はその二人に気づく。
目が合うとあからさまに逸らされた。
この犯人は...彼女達なの?
派手なギャル風の彼女達だけど、私は恨みを買う覚えなんてないんだけどな。
元々そんなに接点もなかったし。
どういう事かと考えあぐねる。
「どうかした?嵐」
不思議そうな顔で私を覗き込んだ可奈。
「...あ..うん。このクラスの犯人は分かったんだけど、彼女達との接点を考えてたの」
「えっ?犯人分かったの?」
叫んだ眞由美の口を慌てて手で塞いだ。
「しっ...静かに」
今はまだ泳がせておきたい。
聞こえてなかったか?と教室の隅に居る彼女達に目を向けた。
友達とコソコソ話してるけど、聞こえては無かったようだ。
ホッと胸を撫で下ろす。
「あいつら?」
私の視線の先を睨み付けた可奈が聞く。
「ん、多分ね。眞由美が怒鳴った時に顔を青ざめさせてたし」
「だったら、すぐに締め上げようよ。嵐に嫌がらせするとか許せない」
眞由美が憤慨する。
「まぁまぁ、待って。彼女達、青ざめた顔をした時申し訳なさそうにしてたんだよね。だから誰かにやらされてるのかな?って思って」
何となくそんな気がした。
首謀者は別にいる。
そこを叩かないと意味がない。
「...もう、嵐ってば甘い。あいつらを締め上げて黒幕が居るなら聞き出せばいいじゃん」
可奈はそう言って拳を握り締めた。
「まぁ、待ってよ。もう少し様子見ようよ」
他人事みたいに言ったら、
「こら、嵐が被害者なんだよ」
と眞由美に怒られた。