現実は小説よりきなり
視聴覚室で暫く続けられたくだらない争い。
それに勝利したのは、やっぱり私を片手で抱き抱えたままの琉希也君で。
「あ~ほんと、悔しい」
地団駄を踏む美樹は、これでもか!って琉希也君を睨み付けてる。
目の周りの化粧が濃いので凄い目力だ。
「うっせぇよ。俺が原因で嫌がらせられてんなら俺が守るのが当然だろうが」
と屁理屈を捏ねる琉希也君。
「...それでも、私も守りたいもん。嵐ちゃんは大切な友達だし」
ね?と私に同意を求めてくる美樹。
ま、友達なのでうんと頷いておく。
「それでも、嵐は俺の」
どこからそんな確証が来るんだろうか?
「...あの..さっきから俺のとか言ってるけど。私は私のであって琉希也君のでは無いよね?」
首だけ振り返って気になってた事を聞く。
美樹と散々言い合いしてたけど、私は誰のものでもないのは間違いないのだ。
「嵐、諦めろ。もう逃げらんねぇ」
ニヤリと口角を上げた琉希也君は挑戦的に私を見下ろす。
だから...私の質問の答えはどこに?
「...嵐ちゃん、諦めるしかないよ。こうなった琉希也は誰も止められない」
美樹はダメだとばかりに左右に首を振ると私へと憐れみの視線を向けた。
「...や、美樹、もう少し頑張ろうよ」
思わず助けを求めて伸ばした手は、
「俺のだよな?」
と言いながら琉希也君に掴まれた。
何?このホールドされた状態は?
肩を抱き寄せられて、手を掴まれてる。
っうか、社交ダンス躍るんじゃないんだからさ。
この密着率要らないでしょ!
しかも、この追い詰められてる感じがどうも...いただけない。
「...えぇ..と..あっ、一回離してみようか?」
そうだ、一度離して欲しい。
恋愛経験もない私が、こんなイケメンと密着なんてしちゃってると、頭も上手く動いてくれないしさ。
「ああ"?どうしてだ」
あに濁点付けないで!
しかも低い声とか卑怯だ。
耳元で聞こえたイケボイスにドキンドキンするんだってば。
「...えぇ、と、そ、それは立ってるとしんどいので座りたいなぁ?的な?」
然り気無く視聴覚室の机を指差した。