現実は小説よりきなり
「ああ。嵐への黒いラブレターだ」
琉希也君悪い顔でそう言うと美樹へと私から奪い取った紙の束を差し出した。
「へぇ、そっかぁ。どんなこと書いてあるのかな?」
陽気な感じでそれを受け取った美樹は、一枚一枚読み進めて行くうちに表情を険しいモノへと変えていく。
ああ...バレちゃったな。
美樹の手にしてる紙には、『シネ』『クズ』『身の程知らず』『淫乱』等々、思い付く限りの誹謗中傷が書かれてる。
ま、得体の知れない相手からそんなことを言われても、動じないっちゃ~動じない。
ちょっとぐらいは嫌だな?とは思うけど。
このお手紙達が私にダメージを与えたか?と言われたら、全くもってそんな事はないのだ。
「んもう!なんなのよ、これ。ふざけてる」
手に持ってた紙をグシャリと握り潰した美樹は怒り心頭だ。
「まぁ、落ち着いて。あんまり怒ると血管切れるよ」
まぁまぁと美樹を宥める。
額に青筋を立てたままこちらを見た美樹は、
「嵐ちゃん、自分の事なのに落ち着きすぎだから」
と私を叱ってきた。
「いや、まぁ、あんまりダメージないし」
正直、こんなの書いて送り付けてくる暇な人達に呆れてると言うか。
「ククク...嵐はやっぱ面白れぇな?」
呑気な私を見て琉希也君は楽しげに笑う。
「面白いとかじゃなくてさ。目に見えない人に誹謗中傷されても実感ないと言うか...ま、さほど堪えないと言うか」
身近な人だとちょっとショックだけど、幸い私には身近な人間は少ないので、まずそう言う事はないだろう。
眞由美や可奈以外、どうでもいい人ばかりだしね。
ま、美樹や琉希也君も最近は身近な人になったのだけれど。
「はぁ...呑気な嵐ちゃん見てると怒りが収まってくる」
肩で息をついた美樹は苦笑いする。
「呑気ってわけじゃないけどさ。こんなのってヤられた側が落ち込めば落ち込むほどヤった相手は喜ぶから、ダメージ受けないのが一番の対処法だと思うんだよね」
ニシシと笑ったら、
「嵐ちゃんて強いよね」
と美樹が肩を竦める。
「強いとかじゃなくてさ。こんなに必死に手紙送ってるのにダメージ受けてない私を見て相手はきっと悔しがってるだろうし。それを考えると楽しくてさ」
そう、私は結構腹黒い。
ヤっても相手が堪えないと、ヤった人はさぞ悔しいだろうと思うんだよね。
それ考えるとワクワクする。