現実は小説よりきなり
「プハッ...お前、腹黒いな?」
琉希也君はやたらと楽しそうに私を見る。
「あ、うん、自分でもそう思う」
と頷いておく。
「でも、安心した。嵐がこの手紙のせいで俺を避けたり嫌いになったりしてなくて。こんなの恨まれて当たり前だしよ」
「いや、これは琉希也君が悪い訳じゃないし」
手紙を送ってきてるのは、琉希也君のファンかも知れないけど、彼は関係ないからね。
「でも、普通は琉希也が嫌になるよ。だって、この手紙には琉希也と離れろとか書いてるし。明らかに琉希也のせいじゃん」
そう言って握り潰した手紙を見せた美樹。
確かに、琉希也君に近づくなだとか、琉希也君と似合ってないだとか書かれてたけど。
それは琉希也君が預かり知らない所で書かれてた訳だし。
やっぱ、彼には落ち度ないと思うんだよね。
「ま、でも、琉希也君がヤらせた訳でもないしね。彼を恨むのはお門違いだと思うから」
「ん、もう嵐ちゃんてば天使」
私の前に居た琉希也君を押し退けて美樹は抱きついてきた。
「うわっ...へっ?」
なぜ?天使...。
困惑した表情を浮かべた私。
時々、美樹って人間が分からなくなる時があるんだ。
彼女は少し不思議ちゃん。
「嵐ちゃんは心が綺麗だもん。目立たないようにしてても内面の美しさは隠せないねぇ」
何を一人納得してるの?美樹。
彼女は私に抱き付いたまま美樹ワールドに入られた模様。
「バカ美樹、嵐を返せ」
なぜか美樹と張り合うように私を美樹の腕の中から取り戻した琉希也君。
私は取り合われても困ります。
「あ~ん、嵐ちゃんを奪わないでよ」
プリプリ怒る美樹は、私を自分の腕の中に収めた琉希也君を凄い形相で睨み付ける。
「うっせ...女でも軽々しく触るのは許さねぇ」
「はぁ?彼氏でもない琉希也にそんなこと言う権利ないし」
「ああ"?嵐はもうすぐ俺のになんだよ」
「なってないうちから彼氏面とかウザいんですけどぉ」
イーッとする美樹はかなりご立腹だ。
ってか、この二人は何を言い合いしてんのかね?
琉希也君の腕の中でぼんやりとそんな事を考えていた。