現実は小説よりきなり
新しい生活
些細な違和感
「おはよ、嵐ちゃん。それと嵐ちゃんとお友達もおはよ」
そう言って寮の玄関で声をかけてきたのは美樹。
「おはよう」
相変わらず化粧が濃いのね、美樹とか思いながらも挨拶を返す。
最近、思うんだけど、美樹はもっとナチュラルメイクの方が似合うと思うんだよね。
「あ...おはよう」
遠慮がちに返したのは加奈。
「おはよう、美樹ちゃん」
眞由美は警戒ぎみに返事する。
二人には朝食の時に、私への嫌がらせを止めさせる為に琉希也達と過ごすことになったのは伝えてある。
本当に大丈夫なの?と難色は示された物の、なにもしないよりは良いと最終的に二人とも納得してくれた。
「さ、学校に行こう!」
美樹は朝からテンション高いなぁ。
「うん、そうしようか」
遅れても困るし。
歩き出した私達4人は奇妙な集団に見えるんだろうなぁ。
昨日、琉希也君と決めたのは学校の行き帰りとお昼休みは彼らと一緒に居ること、それ以外の時間は今まで通り眞由美達と過ごすってこと。
気乗りはしなかったけど、頷くしかなかった状況に追い込まれた。
彼は中々の策士なのよね。
今まで眞由美と加奈と一緒に登校していた所に、今日から美樹も加わったのだ。
私達と、あまり接点のない美樹が参入した事で、ジロジロと興味本意の視線を向けられるのは致し方ないが、見すぎじゃないか?
通学しようと歩いてる生徒達がやたらと見てくるのよ。
初っぱなから、普通が無くなった。
小さく肩を落とした私に気付いた人は居ないだろう。
「嵐ちゃん逹はテスト勉強してるぅ?」
睫毛をバサバサとさせながら聞いてくる。
そう言えば、そろそろ中間テストなんだよねぇ。
「そこそこはね?」
と私。
「私も眞由美とやってるよ」
と加奈。
「私、一年の時みたいに赤点まみれとか嫌だから」
眞由美の切実な思いが伝わる。
「やっぱ皆やってるのねぇ。私不味いなぁ」
また赤点かも!と顔を青くする美樹。
それが分かってるなら勉強すれば良いのにと思う私は間違ってないと思う。
「美樹ちゃんも、そんなにヤバいの?」
と聞いた眞由美に、
「ん、私、実は補欠合格だったし」
と恥ずかしそうに頭をかいた美樹。
補欠合格って...そんなのがあるんだね。