現実は小説よりきなり
「バイバイ、また後でね」
一組の教室の前で美樹はそう言うと手を振って、自分のクラスへと向かった。
「またね」
「バイバイ」
「さようなら」
私、加奈、眞由美の順番に美樹の背中にそう返して、私達は教室へと入る。
クラスメートに向けて「おはよう!」なんて挨拶をしながら、自分の席に向かうと鞄を机の横にかけて椅子に座る。
見渡した教室、いつもと違う雰囲気に少しだけ嫌な予感がした。
向けられる視線に、悪意の有るものが混ざってる。
しかもあからさまな感じ。
はぁ...面倒臭いなぁ。
こんな感じの視線がお昼を過ぎたらもっと増えるのかと思うと憂鬱になる。
琉希也君と行動し始めると、絶対に妬みのターゲットにされそうなんだよね。
完璧に悪目立ちするに決まってる。
「嵐、何かあったら言ってよ」
と加奈。
「そうそう、一人で無理はダメだからね」
と眞由美。
「ありがとう、二人とも」
私の机の前に立ってる二人にお礼を言うと、二人は安心した様に微笑んで自分達の席へと帰っていった。
私は一人じゃないもんね。
たとえ、普通じゃ無くなったとしても二人が居れば大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、二人の背中を見送った。
くだらない嫌がらせになんて屈しないからね。
二人が支えてくれるもの。
そう思いながら、なんとなく手を入れた机の中々。
カサッと言う音と指先に当たった感触に、頭を傾けて中を覗く。
「...ったく、子供かっての!」
思わず漏れでた失笑。
紙屑が詰まった机に笑わずに居られない。
どうするかなぁ。
片付けるの面倒臭いぐらい詰まってるし。
しかもさ、黒い封筒に入れられた手紙も数通入ってる模様だし。
「...めんどくさ..」
と呟いて一通だけ封筒を取り出してみた。
まぁ、書いてることは予想できるけどね。
封筒を開けて、中の手紙を取り出す。
何々....えっと。
[身の程を知れ!普通のあんたが琉希也様の周りを彷徨くな]
いやいや、まだ彷徨いてませんけど?
第一さ、普通に見せかけてるんだから、普通だと言われても堪えないんだよね。
ま、ほんと、暇人のすることだなぁ。