現実は小説よりきなり
チャイムが鳴り先生が教室を出ていくと、クラスメートが騒がしくなる。
楽しそうに会話をしながら帰り支度を始めたクラスメートを横目に、私も鞄へと机と中の物をしまっていく。
「嵐、着替えが終わったら行くね」
可奈の声に顔を向けると、先に用意を済ませた可奈と真奈美が教室のドアの前にいた。
「了解」
今日から美樹が迎えに来てくれるからね。
「じゃあ、先帰るね」
眞由美は可奈の隣で手を振る。
「ん」
頷いて二人に手を振った。
ドアの向こうに消えた二人と入れ替わるように聞こえてきた悲鳴。
「「「キャー!」」」
ああ、嫌な予感しかしない。
帰りは美樹に迎えを頼んだはずなのになぁ。
大きな溜め息を漏らして帰り支度を済ませた鞄を持って立ち上がった。
「...嵐」
聞こえてきたイケボイスに顔を向ければ、悪い予感は的中。
「...琉希也君」
ドアから顔を覗かせて私に手を振る彼は昼間の不機嫌さなんて忘れた様に笑顔だ。
なんだかなぁ~。
迎えに来たら仕方ない。
重い足を動かして彼の居るドアへと向かう。
キャー騒ぐ女子生徒達から向けられる視線に苦笑いが漏れた。
「お待たせ」
そう言って近付くと、
「...ふっ、待ってねぇよ。ほら、帰るぞ」
そう言いながら私の手を掴んだ。
ドキッと跳ねた胸。
手から伝わってくる彼の温もりに戸惑ってしまう。
「「「いやぁ~!」」」
廊下に居た女の子達が悲鳴を揚げた。
五月蝿いし。
「...あの、手を..」
繋がれた手を見ながら、離してと言おうとしたら、
「離さねぇ」
と逆に言われた。
いやいや、離してください。
琉希也君は周りの騒ぎなど気にせずに歩き出す。
手を引かれる私はすっかり見世物になってるし。
女子生徒達から嫌みが漏れ、憎悪を向けられ、本当に居たたまれない。
琉希也君のこの行動のせいで、私の敵は絶対に増えたと思う。
彼は何を考えてるのかな?
手を引かれながら琉希也君の広い背中を見つめる。
私をどうしたいの?
貴方がやってることは、本当に守ることに繋がるんだろうか?
恋愛小説は書けても、本物の恋愛に疎い私にはよく分からないよ。
貴方のこの行動も、今こんなにドキドキしてる自分の胸も。