現実は小説よりきなり
琉希也君に手を引かれて廊下を歩く。
昇降口へ向かう間も、私は見世物の様にあらゆる視線に捉えられた。
どうして美樹じゃなかったのかなぁ?
昼休みに頼んだんだけど。
って言うかさ、琉希也君て私に怒ってたんじゃなかったっけ?
なのに、迎えに来るとかさ。
よく分かんないんだけど。
しかも、機嫌直ってるし。
斜め後ろから琉希也君の顔を見上げる。
なんだろうなぁ?
昇降口に到着すると帰宅しようと靴を履き替える生徒が数人居た。
女の子ばかりなのが少し嫌な予感がする。
こちらを見て睨んでるしね。
「あの子なによ?手なんか繋いじゃって」
「調子に乗ってない?」
「あの程度で琉希也君と釣り合うとか思ってるのかしらね?」
自分の靴箱に着いた私の耳に届いた悪口。
やっぱりかぁ~言ってくると思った。
私も繋ぎたくて繋いでるんじゃ無いわよと声を大にして言いたい。
こちらを見ながらコソコソ文句を言う彼女達に溜め息が漏れる。
「おい!てめぇら」
突然立ち止まった琉希也は低い声で誰かを威嚇する。
はっ?と視線を向ければ私には毒を吐いてた彼女達が顔を青ざめさせていて。
あらら...琉希也君が怒ってらっしゃる。
他人事の様に彼を見た。
「...は、はい」
琉希也君の殺気にビビりながら返事した一人。
「嵐に文句があるなら俺が聞く。今後一切こいつの耳にそのぐだらねぇ愚痴を聞かせんじゃねぇぞ」
そう凄んだ琉希也君は女の子達に鋭い瞳を向ける。
「は、はい」
「す、すみませんでした」
「ご、ご、ごめんなさい」
口々に謝ると蜘蛛の子を散らすように逃げていった女子生徒達。
「これで静かに履き替えられんだろ。俺も靴履き替えてくる」
「あ、うん」
琉希也君は私の側に誰も居なくなった事を確認して、自分のクラスの靴箱へと向かった。
私が靴を履き替えやすい様に彼女達を追い払ってくれたのは良いけど。
敵は確実に増えたと思うんだよね。
私、明日から大丈夫かな?
一抹の不安を抱えながら、ローファーを取り出して履き替えた。
上靴持って帰った方が良いかな?
明日になったら無くなってるとかヤだしなぁ。
上靴に悪戯するのが嫌がらせの常套手段だもんね。
下駄箱にしまった靴を見ながら考える。
はてさて、どうしたのかね?