現実は小説よりきなり
「俺の部屋に鍵あるから明日持ってくるわ。だから、今日の所は友達の所にでも入れさせてもらっとけば?」
「あ、うん。そうする」
琉希也君の提案に快く頷いた。
上靴を手に取るとすぐ側にあった可奈の靴箱にそれを忍ばせた。
事後報告になるけど、この後の勉強会の時にでも報告しよう。
可奈なら良いよって言ってくれるよね。
「上靴の心配が無くなった所で、帰るか?」
琉希也君は優しく微笑むと手を差し出した。
これはやっぱり繋げと言うことですかな?
「えぇ...っとぉ..手は」
繋がなくても良いかな?って言おうとしたら、
「遅せぇ」
も怒られた上に、強引に繋がれた。
.....うん、繋いで帰るのは決定らしい。
何故に?
「あ...ちょ、ちょっと待って...」
抗議の声を上げようにも、琉希也君は私の手を引いてスタスタと歩き出した。
昇降口を出た私達に、生徒達は驚きの表情を向ける。
そりゃそうだよね?
超モテ男の琉希也君と普通代表の私が手を繋いで歩いてるんだもんね?
校内とは比べ物にならないぐらいの視線が刺さる。
痛い痛い...あんまり見られると穴空くってば。
下校途中の生徒やクラブ活動をする生徒が、いちいち立ち止まってこっちを見てくる。
それは男女問わずに。
見世物じゃ無いのよ。
苛っと来る。
「っうか、嵐」
「ん?何?」
「挫いた足まだ痛むのか?」
と聞かれて少し前に捻挫した事を思い出す。
「あ、ううん。大丈夫だよ。早い処置のお陰で良くなったし。毎日のテーピングと湿布が効いたみたい」
挫いた方の足をつま先立ててコキコキ動かしてみた。
今ではほとんど痛みもないぐらいに回復してる。
「そうか、ならいい。難しい顔してたから痛いのかと思っただけだ」
と言われた。
私の足の事を心配してくれてたんだね。
「あ...難しい顔してたのは刺さってくる視線には苛ついてただけだよ」
そう言ってこちらを物珍しげに見てくる生徒達を見渡した。
「あ...この程度は我慢するしかねぇな」
私と同じ様に見渡すと苦笑いで頭をかいた。
琉希也君は普段からこんな風に見られてるからきっとなれちゃったんだ。