現実は小説よりきなり
「これって我慢なの?」
毎日こんな視線にさらされなきゃならないのか?
携帯小説の主人公じゃないのよ!
「ま、そのうち慣れる」
あっさりと言い切った琉希也君に、
「慣れたくないよぉ」
と半泣きになった。
笑ってるけど、笑い事じゃ無いからね。
「美樹達が校門で待ってるから行くぞ」
歩くスピードを上げた琉希也君。
「...あ、そうなのね」
美樹とは校門で...納得しかけて我に返る。
校門じゃなくて教室に来て欲しかったよ、美樹。
キャーキャー騒ぐギャラリーの皆さんを尻目に校庭を進む琉希也君は堂々と歩いていて、その彼に手を引かれる私は俯き加減で小さくなって歩く。
もうね、こうなるの仕方ないよね?
今まで普通だった私に、この視線の数はダメだよ。
彼らと居るならイメチェンした方が良いのかな?
長めの前髪と伊達眼鏡...なんとかしなきゃいけない日は近いかも知れない。
「嵐、俯いてんじゃねぇよ?胸張って歩け。嵐に文句のある奴は俺がぶっ飛ばしてやるから」
ソコソコ言いながらこちらを睨んでる女子軍団に聞こえるようにそう言った琉希也君は、綺麗な顔を恐ろしいほど険しく歪めて周囲を睨んだ。
周囲のざわめきがピタッと静まる。
「えっ?」
ぶっ飛ばすのは...どうかと思う。
少し斜め前にある琉希也君の横顔を見上げた私に彼は顔を向けて視線を合わせてくる。
「俺が嵐と居たくていんのに関係ねぇ奴らに文句は言わせねぇ。お前は自信をもてばいい。分かったな?」
頷くことしか許さねぇって瞳で見るのは止めてよ。
なんの自信さ?と言いたいのに、言えずに頷く私は小心者なのは間違いないだろう。
今まで遠慮なしに睨んでた女子軍団は、コソコソ遠慮がちに視線を向けてくるだけになった。
うん、さっきの琉希也君を見たら逆らえないよね。
近くで見てた私もビビったし。
自分に向けられてなくても冷や汗をかいたよ。
綺麗な顔は般若に変わるとかなり怖いのだと知った瞬間だった。