現実は小説よりきなり
足早に寮に戻った私と美樹は一先ず別れた。
美樹は4階でエレベーターを下り、私はそのまま5階へと向かう。
カードキーを使って鍵を開けると、リビングのソファーに学生鞄を置いて寝室へと向かった。
なんだか、ムカムカする気持ちを払拭するように制服を脱いで、ベッドの上に置いておいた部屋着にしてるパーカーとパンツの上下に着替えた。
タオル地のショートパンツと、同じタオル地のフード付きのパーカー、ちなみに色は黒。
私らしくない色でしょ?
ママが荷物の中に入れてあったらしいのよね。
外に着ていくには勇気が要るけど、部屋着なら問題ないと思うんだよね。
ポケットにスマホを突っ込んでリビングに戻る。
皆が来た時に出すお茶の用意でもしておこうとキッチンへ足を運ぶ。
サイフォンにダージリンの茶葉をセットして、水を補給。
人数分のカップソーサーとティースプーンをトレーに用意。
ミルクと砂糖は好みで入れられるように小さなポットに入れておく。
お茶菓子なんかも要るかな?
ママがこの間沢山送ってきてくれてたお菓子あったよね?
キッチンの収納棚を開けて確認すると結構あった。
一人じゃ食べきれない程の量を送ってきてくれるのよね。
「何が良いか分からないし、皆来てからで良いか」
収納棚を閉めて、リビングに戻る。
ピンポーン
チャイムが鳴ったのでインターフォンで確認すると、約束していた面々がそこに写っていて。
あら、皆揃って来たんだね。
「はい。今鍵を解除するね」
モニター越しに話しかけて、ロック解除のボタンを押した。
ガチャンと玄関で音がすると、すぐその後にドアの開く音が聞こえた。
スリッパをパタパタ言わせながら玄関に向かえば、
「おじゃましま~す」
と美樹を先頭に皆が入ってくる所だった。
「いらっしゃい。スリッパはそこに入ってるから適当に履いてね」
「了解。はい、皆並べるねぇ」
何回も来てる美樹はスリッパの保管場所を開けると、人数分のスリッパを床に並べていく。
「美樹は手慣れてるね?」
と苦笑いした可奈に、
「うん。勝手知ったるなんちゃらよ」
エヘッと照れ笑いした美樹。
「慣れるほど来てたのね」
眞由美は納得したように笑った。