時のかけら
「ルリ……」
小さく囁かれて体がビクンッと反応する。
一秒一秒がとても長い。
どうしていいか分からない。
辺りには誰もいなくて、道の端の草むらからは何だか得体の知れない虫の鳴き声が聞こえてくる。
思わず目を瞑ってしまいそうなほどの眩しい直射日光が、容赦なく照りつける。
だけど、ここだけ……
そんな辺り一面から切り離された別世界みたい。
哲哉、さん?
「やっぱり」
「えっ?」
優しく髪の毛をかき上げられ、さらに近づく顔。
掴まれた手と触れられた顔が熱を帯びていく。
もう……、何?
一体何なの?
心臓が壊れてしまいそう。
哲哉さんに見つめられると、何だかおかしくなる。
この気持ちを認めたくはないけれど、もしかしてあたし、
哲哉さんに……。
「ほら、顔色悪いし」