時のかけら

フゥーと一息、ため息をついた哲哉さんは、両手を離してようやく笑顔を向けてきた。


あたしも緊張の糸が切れたかのように肩の力が抜ける。




「ごめん……少し過剰すぎたね」




そう言ってその場に立ち上がると大きく背伸びをして、再び視線をあたしに移し、




「急にね、不安になったんだ」




ポツリと言葉を漏らした。


真上から降り注ぐ日差しが辺りを明るく照らす。


哲哉さんはそんな太陽みたいに明るく輝いていて、あたしを照らしてくれる人……。




「何度か頭痛があったでしょ……。多分、心のどこかで不安に思っていたんだと思う、もしルリに何かあったらって。
本当に大丈夫なんだよね?」




見つめられて、ズキンッと心が痛む。


だけど……嘘をつかせて。




「うん、本当に大丈夫! だからそんな顔しないで」




いつも明るく笑顔でいて欲しいから。




「分かった、ルリの言葉を信じるから」




ズキズキと痛む胸の内をひた隠し、「うん」と笑顔を向けてあたしも立ち上がった。




「だけど……」


「え? ててててつやさんっ!?」




< 105 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop