時のかけら
「クスッ、その反応可愛いな〜」
「ムリムリムリッ!! 降ろして〜っ!!」
「ルーリ、そんなに暴れると見えるよ?」
そう言った哲哉さんの視線の先には、ジタバタしていたあたしの今にも捲れそうなスカートの裾。
……キャーッ!!
慌ててそれを直していると、頭上から笑い声が聞こえてきて、
「この先もっと急な坂道だから、しっかり掴まっててね」
軽々とあたしを抱き抱えている哲哉さんは、そのまま歩き始めた。
「降ろして?」
「ダメ」
「降りるー!!」
「降りたら帰るからね?」
うっ……
それを言われると。
返す言葉がなくて黙り込む。
そんなあたしを見て優しく微笑んだ哲哉さんは、軽快な足取りで小高い丘をどんどん登っていく。
さっきより早いペースに、いつもはあたしの歩幅に合わせて歩いてくれていたんだと実感する。
哲哉さんは本当に優しいね……。
あたしは、歩く振動で振り落とされないように、気付いたらしっかりとしがみついていた。