時のかけら
「ねぇ」
「んー?」
随分急な坂道は人影一つ見えなくて、とりあえずこの状況を誰にも見られていないことにホッとしながら、
「……重いでしょ?」
それでも恥ずかしくてたまらなくて、気になっていることを聞いてみた。
「うん、重い」
「もうっ、やっぱり降りるー!!」
足を気にしながらもジタバタすると、またしても笑い声が聞こえてきて、あたしは見上げた。
「アハハッ、冗談だよ! ルリってば軽すぎるぐらいだし」
「うーっ……。哲哉さんって優しいけど……意地悪」
「フフッ。それはルリだから、じゃないかな?」
そして、見上げたまま少しの間固まった。
あたしだから?
視線を落としてきた哲哉さんが優しく微笑む。
まるで大切な宝物を見つめるかのように――。
「さっきも言ったでしょ。好きな子ほど、って」
……す、すっ、好き?
聞き間違いじゃない?
えっ?
哲哉さんがあたしを……
好き?
突然の告白ともとれるような言葉に動揺し、胸の鼓動が早くなっていく。
「……何かね、ルリのことすごく大切に感じるんだ。反応も可愛いしね、いろんな表情を見たいって思う。
不思議だよな……初めて会ってからまだ間もないのにさ」