時のかけら
「何遠慮してるの!」
哲哉さんはお茶の入った二つのグラスを両手に持ち、クスクスと笑いながら部屋の真ん中にあるテーブルの上に置いた。
「おいで?」
そう言いながらもあたしに歩み寄り、子どもにするように頭をポンポンッと叩いた。
……だって。
こんなに優しくしてくれる哲哉さんについてきちゃったけど。
申し訳なくて……。迷惑だよね、なんて思ってしまう。
「ねぇ、ルリちゃん?」
名前を呼ばれて、伏せていた顔を上げると、
「プッ……!」
思いっきり変顔をしている哲哉さんがそこにいて、あたしは思わず吹き出してしまっていた。
「よしっ、笑った〜!」
子どものように嬉しそうにガッツポーズをつくる哲哉さん。
「迷惑とか思ってないからね」
そう言って溢れんばかりの笑顔を見せてくれた。
何で……?
「ほら〜。また考え込んじゃって。どうせ悪いなぁとか思ってるんでしょ?」
「でも……」
「だから、勝手につれてきたのは俺だし? 気にすんなって。本当に放っておけなかったんだ」
哲哉さんの言葉に自然と零れ落ちる涙を優しく拭ってくれる。
「一人暮らしだし。女の子がいるほうが華があるでしょ!」
そしてあたしに向かってニコッと笑ってくれた。