時のかけら

哲哉さんの胸に頭を寄せて目を閉じる。


トクントクンと聞こえる哲哉さんの鼓動。


気持ち良くて心地いい。


このまま哲哉さんに抱き締めてもらいたくなる。



この気持ちは何なんだろう?



あたし……哲哉さんに惹かれてるの……かな?


それとも……。



やがて涙が止まり、そっと目を開けてみる。


あたしの体の横で、どうしていいのか分からないみたいに空中で止まっている哲哉さんの手。


何だか愛しくてもどかしくって、あたしから哲哉さんの背中に手を回した。


一瞬ピクッと反応する体。


それに笑みが零れる。




「ギュッ……って、して?」




小さく呟いた言葉が届いたかは分からないけど……。


哲哉さんもあたしの背中に手を回して、優しく抱き締めてくれた。



この腕の温もりさえ懐かしく感じるのは、この場所だから?


嬉しくて幸せで……


こんな時間がいつまでも続けばいいのにって思ってしまう。


これは現実逃避……?


それでもいい。


今だけ、哲哉さんの腕の中にいさせて……。





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