時のかけら
しっかりと握り締めていた一枚のメモ用紙。
テーブルの上に置いて、衣裳ケースの上のバッグを取りに行って財布を取り出す。
そこから取り出したのは、もう一枚の紙。
哲哉さんが教えてくれたもう一つの番号。
「えっと……」
以前手渡されたちょっとくしゃくしゃになった紙には、
080689XXXX。
さっき手渡された綺麗なメモ用紙には、
090689XXXX。
二つを見比べてにらめっこ。
080と090が違うだけで、後の番号は同じ。
うーん。
哲哉さんは携帯を二台持ってるのかな?
あたしが見たのは一台、それもチラッとしか見たことないけど。
それに“080じゃ繋がらない”って、携帯壊れちゃったのかな?
考えたって答えが見つかるわけでもない。
ただ……。
「フフッ」
哲哉さんとあたしを繋ぐもの。
それが、また一つ増えたみたいで嬉しくて笑みが零れた。
「さーてと、とりあえず片付けでもしますか」
二枚のメモ用紙を財布に直し、その場に立ち上がって大きく背伸びをする。
そしてあたしは、いつも通りの日常を過ごし始めた。