時のかけら

哲哉さんの家の前、チャイムを押している人の影。


あたしは駐車場の車の陰に隠れて、その様子を眺めることにした。



腰ぐらいまであるサラサラのストレートの髪。

太陽の光を浴びて、茶色のその髪が一際輝いて見える。


トップスは髪に隠れてあまり見えないけど、デニムのミニスカートにヒール15センチはあるんじゃないかって思うほどのサンダル……かな? 凄いな……。



その服装からもあたしとそんなに変わらない年の女性かなって思う。



徐々に胸の鼓動が激しくなっていく。


何だろ、何だか嫌な気分。


あの女の人は、誰?


そう思った時、あたしの頭の中に一つの答えが導き出されていた。



“哲哉さんの元カノ”



それ以外の可能性だってあるはずなのに、そう思えて仕方がない。


何だかモヤモヤしてくる。


苦しくなる胸を押さえながら、その人が立ち去るのを静かに身を潜めてジッと待つ。


その時間はそんなに長い時間じゃなかったかもしれない。


だけど、あたしにとっては果てしなく長い時間のように思えて仕方がなかった。




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