時のかけら
ようやくその女の人が立ち去った後、また戻ってこないかと確認しながら急いで家の中に入った。
鍵とチェーンをしてドアに体を預けたまま、ズルズルと下がっていく。
哲哉さんの家に誰かが訪ねてくるなんて考えもしなかった。
ましてや女の人……。
直感だけど、元カノらしき人。
できれば見たくなかった。
哲哉さんはあたしだけの哲哉さんでいて欲しい。
他の女の人といる哲哉さんを想像するだけで、胸が苦しくてモヤモヤして目を閉じる。
誰にも奪われたくない。
哲哉さんは…………。
ッ……イタッ。
――――――
――――
『ずっとあたしだけの……だもんね』
そう信じて疑わなかった。
『あたし……と結婚するもん』
したかった、多分あの頃は本気でそう言ってたんだ……。
――――――
――――
この記憶は……?
頭を押さえながら靴を脱いで部屋に戻る。
あたしはベッドに横たわり、静かに目を閉じた。
哲哉さんの声が
聞きたい――……。