時のかけら
・見えない過去と嫉妬と
気付けば窓から差し込むオレンジ色の光。
重い目蓋をゆっくり開き、だるい体を奮い立たせて窓に近づき、外を見ると夕暮れ時。
また、やっちゃった。
哲哉さんが帰ってくるまでにご飯の用意しないと。
そのままフラリとキッチンへ向かい、冷蔵庫の中身を確認する。
「これなら買い物行かなくても大丈夫だね」
トントントン……。
あたしは食材を包丁でゆっくり切りながら、ベッドに寝る前のことを思い返していた。
哲哉さんの元カノらしき人の突然の訪問。
何だか心の中がモヤモヤしてきて、そう……。
哲哉さんを奪われたくないって思ったんだ。
「フフッ」
醜い独占欲。
玉葱が染みるのか目頭に涙が溜まってくる。
哲哉さんとあたしは……他人なのに。
自分でそう思いながらも、なぜか“他人”って言葉が何だかしっくりこなくて、やっぱりモヤモヤする。
何でかな……。
他人じゃないような気になるなんて。
哲哉さんに拾われて一緒に暮らし始めて、そんな中で他人に思えなくなったから?
優しい哲哉さんに惹かれはじめてるから?