時のかけら
それにしても家に電話したって言っていたけど、携帯には電話していないのかな。
携帯のほうがどこにいたって繋がると思うのに。
「ねぇ、何で家の電話繋がらないの?」
「壊れてると言っていました」
これは本当のことだし。
やっぱり家の番号しか知らないのかな?
ってことは哲哉さんの元カノじゃない?
元カノなら番号知っているはずだし、それとも哲哉さんが携帯を変えたとか……。
それに家の番号だけ知っているのは何で?
追い詰められながら頭の中でいろいろと考えてはみるものの、確かなことは分かるわけなくて、だからってこの女の人に確認もできない。
ただ、携帯の番号は聞かれたって教えてあげないと心の中で呟く。
「哲哉はいつ帰ってくるの?」
「水曜には帰ってきていると思いますけど」
質問攻めにだんだん嫌気がさしてくる。
自分のことは何一つ言わず、聞くのは哲哉さんのことばかり。
元カノじゃないなら?
それ以外の可能性も否めないけれど、思いつかない。
ようやく納得したのか、その女の人は後ろに下がっていく。
肩の力がフッと抜ける。
「ふーん、水曜ね」
それだけ言い残すと、長い髪をなびかせながら私の前から立ち去っていく。
胸の激しい鼓動は鳴り止まないまま――……。
あたしは急いで部屋の中へと駆け込んだ。