時のかけら

哲哉さんの言葉で、あたしは心が軽くなっていることに気付いた。



さっきまでの心の中のモヤモヤなんて忘れて楽しんでいる自分がいた。



あたしを元気づけるため……?


トクンッ……。


あれっ、何だろう。この気持ち。


胸の奥が熱くなってくる。


あたしは胸の疼きを抱えたまま、哲哉さんの顔をそっと覗いてみた。



その時、初めて哲哉さんの顔をしっかりと見たんだ。



少し癖のかかったフワフワの黒髪に、眉にかかるくらいの前髪。


目は二重でパッチリしていて、まつげはビューラーをしたみたいなカール。


鼻筋通ってて、ちっちゃくて柔らかそうな唇。



まるで、そう、子犬みたいな人懐っこい雰囲気を醸し出している。


性格が顔に出ているようなそんな感じ。



あまりにもあたしがマジマジと見ていたせいか、今度は哲哉さんの顔が少し赤くなってきた。




「と……とりあえず、家の中案内するよ!!」




動揺を隠し切れない様子で目を逸らし、慌てて立ち上がると部屋を案内し始めた。



後ろから見た哲哉さんは耳まで真っ赤で、何だか可愛かった。




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