時のかけら

その夜、夢を見た――。


洋風の黒のダイニングテーブルに豪華な料理の数々。


三人分のお茶碗にご飯を盛って、手渡していく。


あたしなのに……
あたしじゃないあたしが動いて、感情が流れてくる。


だんだんと視界がぼやけていく。

二人の顔が見えない……。




「はいっ、どうぞ」


「ありがと」




今の声……。
少し落ち着いていて低い声だけど、哲哉……さん?

じゃあ、もう一人は?




「ルリー、俺のご飯少ない!!」


「もう……。てっちゃんお茶碗貸して?」




どういうこと?

哲哉さんとてっちゃん?



三人で食卓を囲んで、楽しそうに談笑しながらご飯を食べていく。


こんな時間が幸せだなって。


そんな幸せを噛み締めて、あたしは箸を進めていく。


二人の顔を見て微笑んで、一口一口味わうようにゆっくり噛んで、お腹も胸もいっぱいになる。




「あ、そうだ。ねぇ、お……」




何を思いついたのか、あたしがどちらかに喋りかけようとして。




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