時のかけら

ドンッ!!



「っ……痛〜っ」




体に衝撃が走って目を開くと目の前には薄暗い空洞があって、何度もまばたきをする。


そうしているうちに、少しずつ冷静さを取り戻してきたあたしは、顔を左右に振って自分の状況を確かめる。


床の上に横たわる体に視線の上にあるベッド。


カーテンの隙間から漏れる明るい光で照らされた部屋の中。



ようやく自分の状況を理解する。


あたし、ベッドから落ちたんだ。




「何言おうとしたんだろう」




その場で体を起こして膝をたて、右手で頭を抱えて髪をかき上げる。


今までベッドから落ちたことなんてなかったのに、どうして今日に限って……。


目が覚めてもなお、しっかりと覚えている内容にため息が漏れるばかり。



何か大切なこと……。
思い出しそうな気がしたのに。


夢の中で楽しそうに食事をしていたあたしは、本当に幸せを感じていたみたいだった。


そうだよね。

一人で食べるより、大勢で食べるほうが楽しいに決まっている。



哲哉さんのいない昨日の夕食を思い出して、今、一人だということを改めて実感してしまった。




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