時のかけら
「他に必要そうなものは後で買っておくから!」
言い終わると部屋を出ていこうとする姿が見えて、あたしは無意識に呼び止めていた。
「あのっ!」
「ん?」
「どこに行くんですか?」
振り向いた顔から不意に優しい笑顔を零し、ドアを指差した。
「俺は車で寝るから。何かあれば呼んでね」
車に……?
「……ぃ……ゃ……」
体が小刻みに震え始め、激しい孤独感を感じた。
「一人は嫌……」
一人になるのが怖い。
何でこんなに一人が怖いの?
分からない……。
隣に誰かいて欲しい。
助けて……。
それでも部屋を出ていこうとする哲哉さんを見て、胸が苦しくなって押し潰されそうな孤独感に、ただ震えていた。
次の言葉を聞くまでは……。
「ルリちゃん、着替え覗かれたくないでしょ?」
不敵な笑みを浮かべ、部屋のドアをパタンと閉めた。
ドア越しに鼻歌混じりの声が聞こえてくる。
これは哲哉さんの優しさなのかな。
明るい雰囲気で接してくれて、あたしの言葉一つ一つに応えてくれる。
会ったばかりのあたしをとても心配してくれる。
哲哉さんの傍はとても居心地がいい。
まるで長年の時を共にしているかのように。