時のかけら
・不思議な出会い
「ねぇ、こんなとこで寝てると危ないよ」
少し体を揺すられ、重い目蓋を開く。
……あれっ……ここは?
ッ……イタッ。
その時突然襲ってきた頭痛に、あたしは右手で頭を抱えてその場にうずくまった。
「えっ!! 大丈夫? 救急車呼んだほうがいい?」
そんなあたしに驚きを隠せない様子で早口になる彼。
あっ、治まったみたい。
あたしはゆっくりと重い頭を起こして顔を上げ、彼を視界に捉えた。
「大丈夫……。治まりました」
「そっか、よかった」
あたしの言葉にホッと肩を撫で下ろす彼。
そんな姿を見て自然と笑みが零れていた。
遥か遠くから波の音が聞こえ、涼しい潮風が体を冷やす。
レトロな雰囲気の建物が立ち並び、夜の暗闇を星屑のようにキラキラとライトアップさせている。
あたしは……
そんな海沿いのベンチに座っていた。
「クシュン!!」
「ほら、そんな薄着でこんなとこで寝てるから……」
彼の言葉が聞こえてすぐ、温かいものがフワッとあたしの体を覆った。
「あっ、すみません、服……」
「着てて? 風邪引くよ」
優しい彼の眼差しに見つめられ、あたしは返事をするかわりに軽く頷き、言われるがままに彼の服を纏った。
温もりが残ったままの服は、心をほんのり温かい気分にさせてくれた。