時のかけら

「ねぇルリちゃん、お願いがあるんだけど……」




最後の卵焼きを食べようとしている時だった。



もしかして食べたいのかな、なんて思っていたんだけど?




「あのさ、言いにくいんだけど……」




さっきまでと違う真剣な口調に、あたしは妙に緊張して不安になってきた。



何を言われるんだろう。


考え出すと悪いことばかり浮かんでくる。



何だか泣きそうな気持ちになってきた……。




「……片付けお願いしたいんだけど、ダメ?」




へっ?


か……片付け?




「俺片付けが苦手でさー。食器とかいつも何日か放置してるんだよね」




両手を合わせて頭を深々と下げる哲哉さん。


いけないと思いながらも、



「……クッ、アハハハハハハ」




大笑いしちゃった。


だってね、何言われるのかってあんなに不安になったのに。



そんな真剣な顔で言うことじゃないでしょって思って。


あぁ〜、もう。


何だか緊張の糸が切れちゃったみたい。



哲哉さんといると、あたしがあたしらしくいられる。


記憶をなくす前のあたしに戻っているような、そんな気分にさせてくれる。



これが本当のあたしなのかな?



哲哉さん……


本当に不思議な人。




「片付けしますよ、任せてください!」




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