時のかけら
抱き締められてどれくらいの時が過ぎたのだろう。
あれほど溢れていた涙も渇き、だんだんと抱き締められていることが恥ずかしくなってきた。
手に握り締めたままの服にギュッと力が入る。
えっと……どうしよう。
手は汗ばんでくるし、体も硬直してくる。
やばい、緊張してきた……。
「そういえばさ」
その言葉と同時に哲哉さんは手をパッと離した。
まるであたしの心を読んだみたいに。
「さすがに下着は買えなかったよ〜」
笑いながら指差した場所を目線で追ってみるとあたしの胸元で、顔から火が出るくらい恥ずかしくなって勢い良く顔を上げた。
「もーっ、バカッ!!」
そしてあたしは肩を軽く叩きながら、一緒になって笑っていた。
……こんな時間が、すごく大切でかけがえのないものに感じる。
哲哉さんとのやりとりが楽しくて、時間が過ぎるのも忘れるほどだった。