時のかけら
「じゃ、俺は先に外出てるから着替えたら来いよ!」
窓の戸締まりをしてクーラーのリモコンを手渡して、哲哉さんは部屋を出ていった。
部屋に残されたあたしは、もう一度ギュッと服を握り締めた。
「哲哉……さん……」
ダボダボのシャツとズボンを脱いで綺麗にたたんで部屋の隅っこに置き、さっきまで手に握り締めていた服の値札を取って袖をとおした。
「こんな感じかな?」
自然と笑みが零れ落ちる。
まるで宙に浮いたようなウキウキした気分で洗面所に向かった。
鏡に映し出される自分の姿。
パッチリとした大きな二重に長いまつげ。
小さい鼻に薄い唇。
胸あたりまである黒いストレートのサラサラの髪。
透き通るような白い肌……というよりはどこか病弱な感じの色。
……あたしこんな顔してたんだ。
何だか幸せそうな顔してるよね?
哲哉さんのおかげ、かな。
自分でも感じていた。
時間が立つにつれて、どんどん元気になっていくのが。
感情が表に出せるようになっていくのが。
真っ暗な闇の中から明るい世界へと導かれているような……。
哲哉さん、あなたに会えて本当によかった。