時のかけら
哲哉さんのその言葉に、溢れていた涙がピタッと止まった。
「えっ?」
「だから、ルリさえよければ本当にうちにいる? 記憶が戻るまででもさ」
……いいの?
そこまで頼って迷惑かけて。
「いいよ、気にしなくて! 乗り掛かった船だしな」
だから、何であたしの思っていることが分かるの?
哲哉さんってどこまであたしの気持ちをくんでくれるんだろう。
だけど、返事ができないでいる。
やっぱりこれ以上迷惑かけるわけには……。
「よしっ決定! 俺と一緒に住んで、ね?」
有無を言わさず哲哉さんは話しを続けた。
「そのかわり何かあったら病院連れていくから!! それだけは約束して?」
あたしの前に差し出された右手の小指。
あたしはそっと小指を絡めた。
「……うん。あたしお世話になってもいい?」
「もっちろん! ルリみたいな可愛い子なら大歓迎!」
そして指切りをした――。
こうして、あたしと哲哉さんの不思議な同居生活が始まったんだ。
第1章【出会い編】end.....