時のかけら
・新婚夫婦の朝
7月5日 金曜日――。
「おはよ〜哲哉さん!」
「んーっ、あと5分ー……」
……もうっ。
「じゃあ朝ご飯抜きね?」
反応ないし。
白いTシャツに黒いハーフパンツ姿の彼、衣笠哲哉さん。
ベッドの横の床に敷き布団を敷いて、体を丸めて寝ている可愛い彼。
……あたしと彼が出会って、早一週間が立とうとしていた。
記憶のないあたしを拾ってくれた優しい彼との不思議な同居生活。
まるで今までの時を共に過ごしてきたかのように、一緒にいることに不自然さを感じさせない。
それは哲哉さんも感じているみたいで。
この有様――。
「てーつーやーさん!!」
少し離れた場所から手を伸ばし、哲哉さんの足の裏をくすぐった。
ドカッ!!
「いってーーー!!」
「……っ大丈夫!?」
ベッドの足に自分の足を思いっきりぶつけた哲哉さんは、悲痛な顔で目を開けた。
「うん、おはよ……また起きなかった?」
あたしの顔を見つめる哲哉さんに無言でコクコクと頷くと、だるそうに体を起こしながらその場に正座をして、
「ごめんね、ルリ」
ってまるでコドモのようにしょんぼりした。
そんな姿も可愛いなぁ〜なんて思いながら一日が始まる。
実は朝の弱かった哲哉さん。
それを知ったのは、哲哉さんが仕事に出勤する月曜だった。