時のかけら
「哲哉さん、今日から仕事だよ〜。起きて?」
声をかけても体を叩いてみても起きない哲哉さんを前に、再び困り果てた。
どうしよう……。
意を決して体を大きく揺さ振ってみる。
「おーい、哲哉さーん」
もしかして、これで起きてくれるかなぁ〜
……なんて淡い期待は脆くも崩れて、
「スーッ……スーッ……」
こっちが気持ち良くなるぐらいの寝息が聞こえてきた。
クスッ、何か可愛いなぁ。
本当に子犬みたい。
ひとまず起こすことを諦めて、その場にしゃがんで頬杖をつき、マジマジと哲哉さんの顔を眺めた。
整った顔立ち。
しっかりと閉じられた目には長いまつげ。
これで彼女がいないっていうことが不思議なくらい、かっこいいと思う。
何でかな?
ボーッと眺めている間にも時間は刻々と過ぎていき、ハッと我に返ったあたしは目覚まし時計に目を向けた。
「えっ、もうこんな時間!?」
焦って哲哉さんの体を大きく揺らしてみたけれど、やっぱり起きてくれない。
「哲哉さんっ、もう7時30分だよ! 45分には家出ないといけないんでしょ!!」
もうどうしていいのか分からず涙目になりながら必死に起こしていた……その時だった。