時のかけら
あたしの意思とは無関係に、体が勝手に動きだした。
えっ……何で?
まるで何かに引っ張られるかのように伸びていく手が、哲哉さんの足を捕らえる。
……足の……裏?
そうしないといけないような気に駆り立てられて、そっと哲哉さんの足の裏に触れてみた。
「うわっ!!」
「キャッ!!」
さっきまでビクともしなかった体は、勢いよく上体を起こしキョロキョロと頭を振りだした。
驚いて床に尻もちをついていたあたしは、呆然とその光景を眺めていた。
「あれっ……っ……えっ?」
まだ少し寝ぼけているのか状況が飲み込めていないようで、哲哉さんはキョトンとしながら座りこんだ。
「……プッ」
「あれっ、ルリ?」
やっとあたしの存在に気付いた哲哉さんは、不思議そうに首を傾げながら覗き込んできた。
その姿に、限界だった。
「クッ……アハハハハッ。哲哉さん寝呆けすぎ〜!!」
「? ……アハハッ」
とりあえずあたしに合わせるかのように、ボケーッと愛想笑いをする哲哉さん。
それがまた可笑しくて、笑いを堪えながら話しかけた。
「……クスッ……今日から仕事だよ?」
あれっ?
何か大事な事忘れて……。
「あぁぁぁぁ!! 哲哉さん時間ー!!」