時のかけら

既に40分を過ぎている目覚まし時計は、静かに時を刻んでいた。


慌てるあたしとは対称的に、哲哉さんはのんびりと首だけ目覚まし時計へ向けると、フラフラと立ち上がった。



寝癖のついた髪の毛を手でとかしながら歩き、クローゼットを開いてスーツとバックを取り出す。



見た目フラフラしているのに、その行動はムダの無い的確な動き。




「えっ、ちょっと、哲哉さん!!」




突然目の前で着替え始めた姿に、あたしは急いで視線をそらした。



行く当ての無い視線はフローリングの床に向けられ、体を反転して哲哉さんに背中を向けた。


どうしよう……。




「んーっ、ルリ……ごめんね」




不意に背中越しに聞こえてきた眠そうな声。




「あっ、もう着替えたからこっち向いていいよ。ちょっと寝呆けてた……」




あたしが振り向くと哲哉さんはテーブルの前に座り、朝食に手をつけようとしていた。


この間ものの1分!?




「俺朝苦手でさ、友達が泊まりにきた時とかはちゃんと起きれるから大丈夫って思ってたんだけどな……
あっいただきます」




余りの行動の早さに、あたしはポカンと口を開いていた。



随分前にお椀に入れられた味噌汁と、お皿の上に乗せられた卵焼き。



冷えきってるのにいいのかなぁ。

あっ、ご飯入れなきゃ!



……じゃなくって!!



哲哉さんの行動につられるように、あたしは呑気に考えてしまっていた。




「時間ないんでしょ? ご飯無理して食べなくていいから!!」




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