時のかけら
ブーッ!!
飲みかけのコーヒーを口から吹き飛ばし「ゴホゴホッ」ってむせる彼。
涙目になりながら、
「えっ!? もしかして初対面じゃなかった?」
と目を見開いた。
やばい、思い出せない……って頭をかきむしる姿を見ていると可笑しくなってきて、
「アハハッ。あなたっておもしろいですね」
とあたしは笑っていた。
まさかそんな返答が返ってくるなんて思いもしなかったことで。
あたしは彼の前で初めて声を出して笑っていた。
「あ、やっと笑った! さっきまでの君、笑っていたんだけど、心が泣いているような気がしたんだ?」
……この人すごいな。
何で初対面なのにそこまで分かるんだろう。
あたしが心から笑っていないって、普通気付かないよ?
「自己紹介がまだだったね! 俺は哲哉、衣笠哲哉」
……きぬがさ……てつや?
聞いたことある気がするのは何でだろう?
「君の名前は?」
あたしの名前……
ッ……イタッ。
また……あの頭痛。
頭の中に流れるノイズ。
…………ル……リ。