時のかけら

「それにしても、ルリ変わったよな」




翌日から毎日一緒に朝食を食べるようになったあたしたち。


もちろん、なかなか起きてくれない哲哉さんを足の裏を触って起こしてるんだけど。




「何が?」




美味しそうに味噌汁を口に含む哲哉さんに問い掛けてみた。




「初めて会った時は、おとなしくて繊細で儚い感じがしたのに……」



「ん〜、今はうるさくなった?」



「ハハッ、違うって! 明るくて元気になったよな〜って思ったんだよ。あっ、いただき!」




最後の卵焼きを、まるでコドモのように嬉しそうに口に頬張る。


そんな姿を見て、あたしは幸せを感じていた。




「哲哉さんは初めっから優しいよね!」




本当に……。


初めからあたしに優しくしてくれた。



あたしが今、こんなにも明るく過ごせるのは哲哉さんのおかげ。



毎日が楽しくて新鮮で、時々自分の置かれている状況を忘れてしまいそうになる。



あたしには記憶がないって。


いつまでも一緒にはいられないんだって。




「そう言えば聞き忘れてたけど、何で足の裏?」



「んーっ、無意識に?」



「へぇ〜。もしかして、記憶を無くす前に何か関係があったりしてな」




そんなことあるわけないよなって一人でツッコミを入れながら、朝食を食べ終えた哲哉さんは仕事に行く準備を始めた。




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