時のかけら
「ただいま〜。ルリいい子にしてた?」
「おかえり、哲哉さん!」
ドアを開けてすぐに、哲哉さんはあたしの頭を撫でてきた。
それだけで今まで我慢していた寂しさが溢れ出しそうになる。
哲哉さんが帰ってきたことが嬉しくて安堵の表情を浮かべ、抱きつきたい衝動に駆られながらも両手をぐっと握り締めた。
「……ルリ」
そんなあたしとは裏腹に、さっきまでの声色と違い深刻そうな低い声を出す哲哉さんに、体がビクンッと反応する。
……何かあったの?
些細なことでも不安になってしまう自分が嫌。
哲哉さんの顔色を伺いたくても、怖くなって目さえ合わせられずにいた。
何を言われるのか分からなくて臆病になるあたし。
「それって……」
その言葉にあたしはようやく目線を哲哉さんへと向けた。
哲哉さんが見ている先を目でゆっくりと追っていく。
あたしの視線はだんだんと下に下がっていき、握り締めた拳へとたどり着いた。
……哲哉さんの……トランクス?
「うわっ!! ごめんっ!!」