時のかけら
薄れゆく意識の中で聞こえたあたしと彼の声――。
哲哉さん?
……違う。
あたしがてっちゃんと呼んでいた人が哲哉さんであるわけがない。
だって、哲哉さんの声じゃない。
じゃあ一体てっちゃんって……。
これは何かの偶然って言うの?
分からないよ。
あたし、何かから逃げてきたの?
今こうやって逃げ出したいって気持ちに駆られるように。
今も過去も何一つ変わってないっていうこと?
……誰か教えてよ。
すべて忘れることができたらどんなに楽か。
けど、それができないなら全部教えてよ……。
あたしは誰なの?
何であの場所にいたの?
何で……
逃げ出したの?
何から逃げ出したかったの?
思い出すのは怖いけど、どうせ思い出すのなら。
思い出さないといけないのなら。
早く教えてよ……。