時のかけら
「……っん……」
あれ?
あたし……。
ッ……イタッ。
そうだ、またあの頭痛が襲ってきて、意識が飛んだんだっけ。
まだ頭がズキズキと痛む。
何か大切なことを思い出したような……。
体をゆっくりと起こし、頭を抱え込んで考えてはみるものの思い出せない。
代わりに思い出すのは、
「何かあったら病院連れていくからね」
って言った哲哉さんの言葉。
嫌……
行きたくない。
このことは哲哉さんに黙っておかなきゃ。
頭を抱えながらゆっくりと体を起き上がらせて、窓へと近づいていった。
傾きかけた日を見て、どれだけの時間が経ったのかと思う。
あっ、そう言えば冷蔵庫の中空っぽ。
お昼作る前に買い物に行くつもりだったのに……。
だるい体を奮いたたせ、あたしは衣裳ケースへと歩き始めた。
哲哉さんに揃えてもらった服に着替え、バッグと合鍵を手に取る。
急がなきゃ……
そう思いながら早足で家を出て行った。